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2026.04.10
【インタビュー企画】長谷虎紡績×学生対談
老舗繊維企業 長谷虎紡績株式会社が挑む、
地域共存と「素材で世界を変える」未来
学生実行委員が、循環フェス名古屋に関わる企業に循環フェスへの想いや自社での取り組みについて伺う対談企画。
第1弾となる今回は岐阜県に本社を構える長谷虎紡績株式会社との対談の様子をお届けします。
長谷享治(はせ たかはる) 代表取締役社長
1980年、岐阜県出身。麗澤瑞浪中学・高校を卒業後、麗澤大学に進学し2003年3月、同大を卒業。2003年4月、長谷虎紡績株式会社に入社。大阪支店や中国の子会社社長を経て2019年12月、5代目として長谷虎グループの代表取締役社長に就任。
「地域との共存共栄」:創業139年の老舗の企業精神
長谷虎紡績株式会社は、明治20年(1887年)の創業から139年を迎える老舗企業です。初代創業者の長谷虎吉が掲げた「地域との共存共栄」の精神は、現代のサステナビリティ経営へと進化を遂げています。
-創業以来大切にされている理念と、貴社の具体的なコア技術について教えてください。
創業は、当時貧しかった地域の農家を救うため、繭玉を適正価格(フェアトレード)で買い取り、生糸に加工して利益を地域に還元することから始まりました。この「地域との共存共栄」の精神は今も最も大切にしています。事業内容としては、衣料用繊維のほか、ユニークな例ではH3ロケットにも使用されている「世界一燃えにくい糸」の製造など、最先端の技術も担っています。
-地域との共存共栄を実現するため、現在行っている具体的な地域貢献活動は何ですか?
地元への誇りを育むため、小学校で地域の繊維産業の歴史を伝える授業を実施しています。また、真の多様性を意識し、社会見学が難しい特別支援学校の子どもたちには出張授業を行い、育ててもらった綿花と自社の綿を混ぜてハンカチを作る活動も行っています。プロサッカーチーム「FC岐阜」とのスポンサー契約を通じて、特別支援学校向けサッカー教室の開催など、多様性を意識した活動も推進しています。
ミッション「素材で世界を変える」:環境負荷No 2産業への挑戦
アパレル産業が石油産業に次いで世界で2番目に環境負荷をかけているという認識のもと、長谷虎紡績は「素材で世界を変える」ことをミッションに掲げ、長期的な視点で環境問題に挑んでいます。
-2030年までに環境配慮素材の比率を80%以上にする目標について、現在の達成状況と課題を教えてください。
現在、製品の約50%が環境に配慮した素材に置き換わりつつあります。達成に向けた課題は、この環境配慮素材が通常の素材に比べて高コストであるため、いかに市場に受け入れられる価格帯で提供できるかという点です。
-新しい素材開発を続ける上での強みを教えてください。
新しい素材開発には、東レの炭素繊維のように50年、60年という長い時間軸が必要なため、140年の歴史を持つ当社の「長期的な視野での正しい判断力」が強みです。タンパク質繊維を開発するスパイバー社とも協業しています。スパイバー社のタンパク質由来の素材は生分解性があるものの、単体では強度やコストに課題があります。そのため、当社の紡績技術でウールなどを混ぜることで、コストを抑えつつ強度を向上させ、実用化を進めています。
-人間中心ではない「ネイチャーポジティブ」な環境対策や、未来への挑戦について教えてください。
排水が河川に与える影響を可視化し、単に「飲める水」にするのではなく、微生物が生きられる「最も自然にとって良い状態の排水基準」を追求する「ネイチャーポジティブ(自然資本)」の観点から排水処理設備を見直しています。さらに、岐阜県の核融合発電ベンチャー「ヘリカルフュージョン」とも連携を模索し、ロケット用に使われている燃えにくい糸の技術を応用できる可能性を追求するなど、新しい分野への挑戦を恐れていません。
「現在地を正しく知る」:未来に責任を持つ経営の軸
社長は、過去10年で収益が下がった状況を変えるため、「失敗を恐れず挑戦する」企業文化へと変革を促し、経営判断の軸を明確にしています。
-社員に促している企業文化は何ですか?
社内文化として「失敗を恐れず挑戦すること」を促し、失敗を責めるのではなく称賛する文化を作ろうとしています。日々のものづくりの小さな改善から、核融合のような大きな分野へのチャレンジまで、組織全体で変革に取り組んでいます。
-新しい取り組みを決定する際など、経営判断で最も大切にしている軸は何ですか?
最も大切にしているのは、ナビゲーションシステムのように、「現在地を正しく知ること」です。目標達成のためには、まず「今、自分がどこにいるのか」「取り巻く環境はどうなっているのか」を正しく理解し、5年後、10年後の未来を予測した上で、コア技術を活かした挑戦を選ぶことが重要だと考えています。
「循環フェスへの期待」:楽しさを通じた認知拡大
環境問題への取組みを頑張っていても、一企業だけでは世間の認知は限定的ですが、循環フェスやFC岐阜などを通じるならば、格段に認知度は高まります。また、楽しく取り組むことが広がりをもたらします。
-循環フェス名古屋に対して、特にどのようなことを期待していますか?
環境問題に関心がなかった人や、企業活動を知らない人にも認知を広げるための重要なプラットフォームであると期待しています。FC岐阜との連携によるリサイクル活動の広報やSNS活用など、外部連携を通じて、「楽しみながら」環境の重要性を伝えていくことの価値を強調したいです。

*インタビュアーは片岡泉(愛知大学)、若松香花(南山大学)、浅井彩紀(愛知大学)でした。


